2026年 6 月12日
会社
TOA株式会社(本社:神戸市、代表取締役社長:谷口方啓、以下「TOA」)と株式会社otonoha(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:稲畑伸一郎、以下「otonoha」)は、半田市(愛知県)および株式会社図書館総合研究所(本社:東京都文京区、代表取締役社長:廣木響平、以下「図書館総研」)と協働し、半田市立図書館にて2026年2月初旬から3月中旬にかけて、館内の音環境に関する実証実験を実施しました。
期間中に来館者を対象として行ったアンケート調査(回答161名)をもとに、「静寂が前提」とされてきた図書館空間において、音や会話を一定程度許容する新たな利用スタイルが受容されるか、また来館者の体験にどのような影響を与えるかを検証しました。
本実証では、TOAおよびotonohaが音環境設計ならびにサウンドシステムの提供・設置・運用を担い、半田市および図書館総研と連携して、改修工事を伴わず“音”で空間の使われ方を段階的に整える手法の有効性を検証しました。館内には植栽型サウンドデバイス等を配置し、音環境の違いによる利用者評価の変化を比較できるよう、図書館1階に以下の3つの実験エリアを設置しました。
この3環境を、来館者アンケートによって比較し、利用者の満足度、心理的影響、賛否意識等を多面的に分析しました。

近年の図書館は、本を読む・借りる場所にとどまらず、地域における学び・交流・創造の拠点として役割を拡張しています。しかし、「静かにする場所」という従来のイメージも根強く、一定の会話を伴う子ども連れ利用などに心理的なハードルが生じるケースがあります。
一方で、静かな環境で読書や勉強に集中したい利用者も多く、図書館において静寂と適度なにぎわいをどのように両立するかが課題となっています。
今回の実証では、大規模改修を伴わず、音環境設計によって空間利用を調整する手法を検証しました。
期間
2026年2月5日(木)から3月中旬までの約1カ月間
場所
半田市立図書館 本館(愛知県半田市桐ケ丘4丁目209-1)
対象
来館者アンケート回答者161名
回答者属性・利用実態
エリア③ 会話可能エリアの設置については、賛成が60.4%(96名)、どちらでもないが20.0%(31名)、反対が18.1%(28名)となり、過半数の来館者から支持を得る結果となりました。

図書館の音環境イメージについては、「静かで落ち着く」と回答した人が約51%(81名)であった一方、「静かすぎて気を遣う」と回答した人も約41%(66名)にのぼり、静寂が一定の利用者にとって心理的負担となっている状況が確認されました。

エリア① 音あり読書エリアについては、回答者72名のうち、「周囲音が気にならなかった」と回答した人が69%(50名)、「快適」と評価した人が68%(49名)と、いずれも高い割合を示しました。
特に、「川のせせらぎ」「鳥の声」などの自然環境音に対する評価が高く、周囲音のマスキングや心理的な緊張感の緩和に寄与する音環境設計の有効な方向性が示されました。
エリア② 音なし読書エリアでは、回答者の27%(17名)が、他エリアからの音漏れを「気になる」と回答しました。
特に、エリア③ 会話可能エリアからのBGMや会話による音漏れが指摘されており、音環境のゾーニング(エリアごとに音を分ける設計・運用)が今後の重要な課題であることが示されました。

これまでの調査結果を属性や利用状況ごとに整理したところ、サンプル数が限定的であるため統計的な検定力には制約があることに加え、本結果は回答者の傾向を示すものであり、利用者全体への一般化には一定の留保が必要なものの、利用者の賛否意識について、いくつかの傾向が確認されました。
年代別に見ると、高齢層ほど音や会話を許容するエリアに対して慎重な傾向が見られました。特に70代では賛成率が31%にとどまっており、年代が上がるにつれて賛成率が低下する傾向がうかがえます。

利用頻度が高い、いわゆるヘビーユーザーでは、反対意見が相対的に多い傾向が見られました。ただし、その内容は導入そのものへの否定というよりも、BGMの音質や音量など、音環境の品質改善を求める意見が中心でした。
「静かすぎて気を遣う」「緊張する」と感じている45名では、エリア③ 会話可能エリアへの賛成率が82%(37名)と高く、現状の過度に静かな環境に対する負担感が、新しい音環境への支持につながっていることを示しました。
回答者の中には、「子ども連れであっても静かに利用したい」と考える層も一定数存在しました。会話可能エリアに否定的な回答をされた方のうち、約6割の方はお子様連れであったことから、お子様連れ=静寂に否定的、という単純な図式ではないことが示唆されました。
「静かすぎて気を遣う」「緊張する」と感じている45名では、エリア③ 会話可能エリアへの賛成率が82%(37名)と高く、現状の過度に静かな環境に対する負担感が、新しい音環境への支持につながっていることを示しました。
賛否の分かれ方を整理すると、エリア設置の考え方そのものよりも、適切な音源選定が評価に影響している傾向が見られました。音環境の改善が、利用者評価を左右する重要なポイントである可能性が示されています。
本実証から得られた知見を総合すると、図書館における音環境のあり方について、以下のような示唆が得られました。
本実証実験は、図書館における音環境の工夫が、利用者の心理的負担の軽減や利用体験の質の向上に寄与し得ること、また新たな利用層の受け入れや空間価値の向上につながる可能性を示しました。加えて、アンケート結果からは、今後の社会実装に向けた具体的な課題とその解決の方向性が明確になっております。
今後は、音源や音量、運用ルールをより利用者に受け入れられやすい形へと最適化するとともに、静かに過ごしたい利用者と、一定の音や会話を許容したい利用者が無理なく共存できるよう、ゾーニングの高度化やエリア間の音の干渉を抑制する技術的・運用的工夫を検討します。あわせて、取り組みの意図やエリアの使い分けが伝わる案内整備を行うことで、静音エリアが守られる安心感を示しながら、利用者が安心して目的に応じた空間を選択できる環境づくりを目指します。
また、導入後も継続的に利用者の声を収集・分析し、段階的な改善を重ねることで、実用性と満足度の双方を高めていく運用モデルの確立を図ります。これらの取り組みに、TOAおよびotonohaが有する音環境設計に関する技術と豊富な実績を融合させることで、図書館における新たな空間価値創出の具体化と、再現性のあるサービスモデルへの展開が期待されます。
今後も、半田市および図書館総研と連携のもと、本実証で得られた知見を基盤に実証を加速させ、持続的かつ拡張可能な形での展開を視野に入れた取り組みを推進してまいります。これにより、多様な利用者ニーズに応える図書館空間の実現とともに、本分野における新たなビジネスモデルの確立を目指します。
今回の実証実験では、多くの市民の皆様に関心をお寄せいただき、貴重なご意見を多数いただきました。あらためて、図書館における静寂は大切な価値である一方で、過度な静けさが一部の利用者に心理的な緊張感や利用しづらさを感じさせていることも確認することができました。
音によるマスキング効果によって、会話や物音が目立ちにくくなり、結果として静かで快適な環境の維持に寄与することも、実証実験の結果から確認することができました。
図書館は「静かな場所」であることが大切ですが、それだけではありません。初めて訪れる方やお子さん連れの方、学生や社会人、高齢者の方など、誰もが過度な緊張を感じることなく安心して利用できる場所であることも、同じように大切な価値だと考えています。
今回の実証実験を通じて、市民の皆様とともに図書館のあり方を考えることの重要性を改めて認識しました。今後もいただいたご意見や実証結果を丁寧に検証しつつ、静寂の価値を大切にしながら、本市図書館がより多くの方に親しまれ、安心して利用できる施設となるよう取り組んでまいります。
sound veil(サウンドヴェール)は、植栽型のサウンドデバイス(IoTスピーカー)を使ってオフィスの音環境改善を支援するコンサルティングサービスです。実証実験で得た豊富な知見に基づき、会議室の音漏れを改善するためのマスキングや、オフィス空間に合ったBGMなど、オフィスで起こる音のお悩みに応じて幅広くご提案し、働きやすく快適なオフィスづくりに向けた音環境の構築をサポートしています。